
最強殺し屋コンビのゆるい日常と本格的アクションを描いた作品の第2弾。
2作目となっても全く力んでないのがこの作品の良いところ。
2人を殺して殺し屋協会のバイトから成り上がろうとする兄弟との対決の行方は―
映画の2作目と言うと、前作を超える必要があるため変に構成や設定を変えてみたり、スケールアップさせすぎて前作との話の整合性が取れなくなってしまい、いわゆる”駄作”というものになってしまいがちである。
今まで見た映画の中で1作目を超えた2作目というと「エイリアン」「ターミネーター」「マッドマックス」あたりがすぐに浮かぶのだが(もちろん他にも傑作はあると思う。あくまでも自分の感性の話)、それらは前作の設定からガラッと環境を変えてみたり、真逆の構成にしてみたりとこちらを驚かせてくれた。
さて本作も2作目と言うことなのだが、これが全然肩肘張ったこともなく、むしろ前作以上にゆるい感じをこれでもかとぶち込んでくる。
設定などは完全に前作からの地続きで、変にいじることなく”相変わらず”感を強調していて安心して観ることができた。


冒頭から出てくるのは今作のサブ主人公とでもいうべき殺し屋アルバイター”ゆうり”と”まこと”の神村兄弟。「青は遠い色なんだよ」というセリフが殺し屋協会への正規雇用への憧れを物語っているように感じてしまう。
”ヒョロガリを一人殺す”という依頼を受けて向かった家にはなぜか屈強な半グレたちがいて、確認を取った結果殺すことになるのだが、お互いに銃を持っていて、それなりの距離にいるので普通は銃撃戦になりそうなものだが、そんなことお構いなしに家の中になだれこみ、迎え撃つ半グレ軍団も兄弟に向かって突進してゆく。
この潔くアクションに振り切る作風につい”これこれ!”と思ってしまう。
そして仕事を終えた後食堂で仲介役の赤木と三人で反省会をするのだが、結局自分たちのミスという事にされて報酬は支払われなかった模様。
そんな理不尽な事情でも甘んじて受け入れなければならない彼らの立場をうまく説明できるように描いている。
殺し屋の世界にも非正規雇用問題があるという世知辛い事実から脱却するために赤木は彼らに話を持ち掛ける。”正規の殺し屋を殺せば、空いた枠に繰り上がりになる”という噂がある事と、”相手は台東区で活躍する別次元の腕を持った女殺し屋コンビ”であると。


さてそれとは対照的に相変わらずの社会不適合者ぶりを発揮しているちさととまひろの二人は、契約だけして四年間ほったらかしにしていたスポーツジムと高校卒業後に切り替わっていた生命保険の請求を支払う羽目になる。(”ワクワク殺し屋保険プラン”と”ウキウキ殺し屋保険プラン”というネーミングがシュールすぎる)
結局支払い期日ギリギリまでお互いにどちらも支払いをしていない事実が発覚し、あわてて支払いに行くのだが、運悪く武装した強盗が銀行に押し入ってしまう。
支払いに間に合わないと判断した二人は強盗を撃退するのだが、協会から勝手に仕事をしたと判断されて謹慎を言い渡されてしまう。
ちなみに強盗を撃退する場面はジャッキー・チェンの映画を彷彿させるようでとても小気味良い。締めのアクションはタランティーノの「デス・プルーフ」のオマージュだろうか?
あと謹慎を言い渡される場面では”ストライキだ”、”起業してやる”、”SNSで炎上させてやる”と二人は抵抗するのだが、「殺し屋七カ条」等の規約を盾にすべて却下されてしまう。バイトの兄弟の一件等を含めて協会が搾取する側だとハッキリと判る。紛れもないブラック企業である。


仕方なく着ぐるみのバイトを始めた二人だったが、(ちなみにアルバイトの雇い主は渡辺哲。彼の繰り出す「ビジュ爆発」と「メゾンマルジェラ」は屈指の決め台詞!)帰り道にお金に目が眩んだちさとは賭け将棋で給料全額負けてしまう。
翌日ちさとが”もうギャンブルしない”とまひろと交わした約束を破って性懲りもなくまた賭け将棋をしたことと、それを誤魔化そうと嘘をついたことが発端で二人は壮絶な”ぬいぐるみファイト”を始めてしまう。(ちなみにぬいぐるみを着ているのでコミカルな動きになってしまうのだが、じつにキレッキレのアクションを見せる。何とドロップキックまで繰り出す!)
ちなみにこの喧嘩を収めたのは渡辺哲らしい。本気で争うこの二人を鉄拳制裁で(ちさとはこの後ほっぺたをさすっていた)止められるとは恐ろしい実力の持ち主である。


その帰り道、兄弟二人に彼女たちは襲撃されるがこれを難なく撃退する。この場面では「スリーアウト制」「バイオレンスアクション」「みちたか君」というワードが登場するが、元ネタを知っていたから良いもののなぜこんな判りにくいものをブッコんでくのだろうか?「花束みたいな恋をした」は観ていないというのに。
兄弟たちを引き取るために訪れた田坂には今回宮内という後輩が同行している。この宮内がまた見かけによらず口が悪い。田坂に対しても「そんなんだから嫌われる」等の発言を度々繰り返す。はっきり言って面白い。
さて前作から非常に殺し屋協会というものに興味を持っているのだが、今作でも少しだけその内情が垣間見える。田坂と宮内の他に処理現場に二名ほどの男性作業員がいるのが確認できた。
また兄弟の持っていた銃からすぐさま仲介役である赤木の所在を割り出し、これを拉致し、粛清している。
協会の持つ情報力の広さと正確さ、案件処理までのスピード感を見るとかなりの規模の組織であるという事がわかる。そういうところもブラック企業あるあるである。
そんな中、田坂たちが油断している隙をついて兄弟たちは逃げ出してしまう。彼らを追いかけるために宮内とちさまひコンビに助けを求めるも田坂が一人になったところを兄弟に銃を奪われてしまい撃たれてしまう。
その後兄弟たちは粛清されて川に浮かんでいる赤木を見つけて弔うのだが、なんとドラム缶に入れての火葬。赤木は最初から最後まで雑に扱われていて気の毒になってくる。


翌朝まで兄弟を捜索していたちさまひだが、田坂の無事を知り食事するために入った食堂で偶然兄弟に鉢合わせてしまう。
一般人に迷惑をかけたくないちさととまひろだったが、兄弟は発砲して逃げ出してしまう。(プロとアマチュアの対比かと思う。”そういうとこだぞ!”と兄弟に言ってあげたい)
ちなみに弟のまことはこの食堂の看板娘のさくらに”ホの字”であり、のし上がったらデートに誘おうと思っていた。兄貴も弟には甘いのか、見込みのないであろう恋を応援しようとしていた。いろいろと切ない。


兄弟たちをスクラップ工場まで追い詰めた彼女たちは珍しく謹慎が堪えているのか田坂の見舞いに訪れていた須佐野に許可を取ろうとする。
この場面でも一緒にいた宮内はなかなかに田坂を罵るのだが、それに奮起したのか田坂が彼女たちに仕事を依頼する。いつもは彼女たちに”殺すときには顔を狙わないでくれ”と説教する田坂がもう何をしても構わないと彼女たちに一任する場面はなかなかグッときた。
二人の「了解っす」が泣かせる。


兄弟たちとやり合う場面は前作以上にキレキレのアクションで”銃を撃たれても当たらないようによける”と”銃弾をかわしながらこちらも銃撃する”という動きの繰り返しでなかなか見ていて目が回る。
そんな中銃弾を受けて負傷したのはちさととまこと。
残ったまひろとゆうりで決着をつけることになる。
最後の戦いを前にゆうりとまことは中学生時代に入っていたバスケ部の掛け声を挙げて自分たちを鼓舞するのだが、これが実にダサい。本人たちもそう言っている。中学生時代は誰しもが黒歴史があるんだと確認できた。


一方ちさととまひろは戦いに向かう前にささいな”約束”をする。この作品を通して”約束”は重要なキーワードになる。そして彼女たちにとっての”約束”は生還を前提としているので非常に重いのである。
またちさとは約束を破ったことをまひろに謝るのだが、「いいよ今更」とまひろは返す。これは前作でまひろが謝った時にちさとが返したセリフである。なかなか憎い演出である。


今回の一騎打ちも壮絶な殴り合いになるのだが、今作は終始まひろがやや有利な感じで描かれている。
殺し屋のプロとしての格の違いを感じさせるような、それでいて圧倒的ではないように描かれている。
途中気絶したであろうゆうりが夢の中で勝つ場面とかはなかなか凝っている。何かのオマージュらしいがこちらは知らないので素直に面白かった。
最後はお得意のジャンピング頭突きでまひろが勝利するのだが、命を賭けた戦いをした相手同士なのか二組には奇妙な友情のようなものが芽生える。
実はこの二組には共通する要素が色々あって(定食屋での”1000円の壁”発言やラジオの”こども科学電話相談窓口”が好きなところ、”チャオチュールをそのまま食べる”等)違う出会い方をしていればきっと反目しながらでも良好な関係を築けたのではないかと思うと悲しくなってしまった。


もう田坂とかどうでもいいから仲間になってしまえばいいのにとか思っていたが、まことのチャオチュールで乾杯した後ちさととまひろは当然のように兄弟に向けて銃を放つ。やっぱりそうなるよなと思いながらもなかなか胸の痛む結末だった。
まひろはいつか”名前くらい聞いときゃよかったな”と思う相手に出会っていたことなどもちろん知りもしないし、ちさともいつかこの兄弟に嘘を吹き込んだ相手を殺すことになるなどとも思っていない。
できれば彼女たちにはあの食堂に通い続けてほしいと願う。兄弟の分まで。
ちさととまひろはエンドロール後まで”ビジュ爆発”と”メゾンマルジェラ”論争を切り広げていたが、正直”ビジュ爆発”にもそんなに文脈があるのか疑問である。
前作では殺し屋コンビの凄さと特別感を描いていたが、今作ではその二人を取り巻く環境をクローズアップしていて最後まで飽きることなく見ることができた。それだけでも非常に稀有な第2作であると思う。

| 監督 | 阪元裕吾 |
|---|---|
| 脚本 | 阪元裕吾 |
| 出演者 | 髙石あかり 伊澤彩織 丞威 濱田龍臣 |
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今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は予想通り「ナイスデイズ」で行きます!






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