
最強殺し屋コンビちさととまひろの物語がドラマになった!
いつでもゆるい二人の日常と本格的アクションはそのままで。
今回更にままならない暮らしに追い込まれた二人は果たしてモラトリアムを守れるのか!?
あの「ベイビーわるきゅーれ」がTVドラマ化するという一報を目にした日から、放映開始日を首長竜のようになって心待ちにしていた。
当方は大阪住みのため、「テレ東」にての放送という事が唯一引っ掛かっていたのだが、不安は見事に的中し、放映開始日のテレビ欄にはどこにも「ベイビーわるきゅーれ」の名前はなかった。(だいぶ後日にテレビ大阪で無事に放送はされた。)
しかしどうしても視聴したかったので困った時のTver様を頼りにして無事全話視聴することができた。(録画できなかったのが心残りだが)
関西はやはり関東様に嫌われているのだろうか?時々同様の事があり、遅れての放送どころか、永遠に見ることのできなかった番組がいくつかある。どうか今後は改善をお願いしたいものである。


とは言え大ファンの作品がドラマ化という事で期待せずにはいられなかったのだが、第1話から挨拶代わりとでも言うようなアクションシーンを見せてくれた。
この作品を初見の人間でも心を鷲掴みにしてしまうようないつも通りのアクションに制作陣の”どうだ見たか!”とでも言いたげな心意気を感じて全然関係ない自分でさえも誇らしく思えたのを強く覚えている。
そして仕事の後に出てくる相変わらずの田坂と、二人とは良好な関係を築いているであろう宮内。
それだけで満足してしまいそうだが、この作品がそれくらいで許してくれるはずはないことも承知している。
第1話冒頭で見せた半グレ組織の壊滅や第2話での裏で強盗を繰り返す居酒屋店員グループの処分など、1話完結型で行くのかと思いきや、少しづつ伏線が張られていて、最初はゆるい感じで進んでいた物語が後半になると怒涛の展開を見せて、こちらの気持ちが追い付かなくなるほどの事態になる。
大きく分けて前半は”風林火山プロジェクト編”、後半は”ジョブローテーション編”に分かれる。この2つのストーリーを通じてちさととまひろは成長を迫られる事になる。


とは言えやはりこの作品は基本的にコメディなので合間合間にほのぼのとさせるエピソードもあり、第2話の居酒屋に二人がアルバイトとして潜入する話などはまひろの尋常ではないポンコツぶりと、そんなまひろをフォローするちさとのそつの無さや環境適応力の高さを描いていて笑える。
そんな理由で始めたので、アルバイト先の従業員と仲良くなりかけた矢先であっても証拠を見つけてしまえば殺さざるを得ない非情な仕事を二人がしていることを思い出させてくれる。二人が仕事の後で”いいお店だったね”と語る場面が非常に切ない。
たとえ地上波であっても手を抜かない作り方に改めて尊敬の念のようなものを感じた。
さて前半の最大の目玉は”風林火山プロジェクト”であるが、その中でやはり強く印象に残ったのは”伝説の殺し屋”と言われ、協会全国2位の座に就く宮原(安定の本田博太郎)の無自覚にも程が有ると言わんばかりの老害っぷりと、そんな宮原に憧れたが故にプロジェクト成功のために振り回されることになる夏目の悲しきリーマンぶりである。


宮原は本質的に”人たらし”の才能を持っていると思われ、深い洞察から含蓄のある言葉を語るのだが、実際は”言ってることとやってることが違う”体たらくであった。(SNSを否定したときに、反論したメンバーを追い詰めるほどのハラスメントを見せるが、実は宮原自身がSNSにハマっていた等)
一方夏目はプロジェクトにスカウトしようと見張っていたまひろに殺されかけて一晩中冷凍庫に入れられても耐え抜き、(どんな訓練を受けたのか気になる)真面目過ぎるが故にプロジェクトメンバーにパワハラで訴えられて協会のハラスメント研修を受けさせられてもプロジェクト成功のために奔走するタフさを持っている。
ちなみに夏目は須佐野の後輩らしく、田坂も含め親しい間柄であったようで、入鹿みなみとも同年代であったようである。


夏目は宮原が所望した釜めし弁当が手に入らないと知るや、すぐさま代替品を作る計画を立ち上げ、あと一歩のところまで複製に成功するほどの有能なところを見せるのだが、(これが理由でパワハラ認定を受けた)逆にその労力は宮原に釜めしを諦めさせる方に使えばいいのにと思うくらいのヘタレな部分も見せる。
とは言え夏目の尽力もあり、プロジェクトの準備は順調に進んで行く。(まひろが金髪を黒く染めるのを拒否したり、夏目が訴えられるのを見たちさとが味をしめて演出担当のメンバーをパワハラで訴えるのは面白かった。1年前ならみなみも訴えられていたのだろうか?)


そして決行の日、ちさととまひろがサポートに回り、ターゲットの取り巻きを排除するのだが、土壇場で宮原の気が変わりプロジェクトは失敗に終わる。
結局宮原は協会から供与されたドローンでの爆撃でターゲット抹殺に成功するのだが、夏目はそれまでの過労とストレスと1度目の失敗で宮原に見限られたことにより限界を迎えてしまう。
夏目は宮原とたまたま訪れていた本部スタッフをはじめ、プロジェクトのメンバーも次々射殺する凶行に及び、最後は自殺を図ろうとする。


しかしその直前に須佐野から夏目粛清の指示を受けたちさととまひろの二人と戦うことになってしまう。
夏目は二人を相手にして発揮される自身の戦いの才能に驚きながらも最後は敗北し、(事実二人はその強さを認める発言をしている)二人に対して謝罪の言葉を残す。
二人もそんな夏目には心底同情しているようで、協会に代わって夏目に謝罪をする。仲間を失ってしまうとてもやるせない最期である。
その後現場に現れた須佐野にまひろは関係を理解した上で言葉をかける。彼女も成長したものである。
ちなみに入鹿みなみは宮原の死の一報を聞いて本気で喜んでいた。
そんなまひろだが、今作で”推しをお迎え”している。ぬいぐるみの”カルビイカ”である。


と言いながらも外出先に置き忘れて紛失しかけたり、最終話でクリスマスツリーに飾られるまであんまり登場しなかったりもするので本当に愛されていたか疑問ではある。
しかしカルビイカをひったくり犯に盗られた時などはちさとが怯えるくらいに普段では見せないほどの冷静さで犯人の所在をつかみ、感情にまかせて撃ち殺しそうになるくらいには大事にしていたと思われる。
そんなカルビイカを迎えることになった理由に清掃班の宮内の存在がある。


今作あまり田坂は目立たないのだが、その分宮内がクローズアップされる回が何度かある。
当方実はちさととまひろの二人と同じくらい宮内は好きなキャラである。田坂に対しての暴言の数々もそうだし、(最終話では何気に蹴りを入れている)死体を前に平気で弁当を広げて食べるところや、タックルじじいに対しての逆鱗ぶりも見事である。マシンガンを乱射したがる暴力的な部分もとても清々しい。


もし次回作に困っているなら宮内を主役にしたスピンオフでも作ってもらいたいと願う。
また前半にはまひろと一緒にちさとが里帰りする話がある。


家族に対して殺し屋の仕事はどういう風に話しているのかすごく興味があったのだが、拍子抜けする位共有されていて驚いた。
家族に危険が及ばないようにきっと秘密にされているんだろうとか勝手に想像していた自分が恥ずかしくなった。
ちなみにこの話ではちさとがまひろをこの仕事に誘ったことが明かされる。
そう言えばこの作品では頻繁に殺しが行われているにも関わらず全く警察が出てこないなと思っていたら、第8話で初めて出てきた。
だがしかし警官と言っても私服警官である。前田旺志郎演じる警官が二人にしつこく職質をかけて、最後は瞬殺でまひろに失神させられるのだが、演じる前田は本当に関西出身らしく、自然な関西弁を話していたので好感が持てた。
もう少し警察が出て来ても不思議ではないのだが、それがこの作風と思うことにしよう。
さてそんな二人が協会と向き合うことになる後半のエピソードが始まる。”ジョブローテーション”である。


二人は協会からの指示により”ジョブローテーション制度”のために一時的にコンビを解消させられることになる。
まひろは監査部に配属されるのだが、いよいよ名前だけがチラホラ出ていた”粛清さん”なるカテゴリーの人物が姿を現す。”ナイスデイズ”の入鹿みなみと七瀬も多分そうであったと思われるが、今回はもっと具体的に語られている。
そんな”粛清さん”日野彰を演じているのは柄本時生。ボサボサに伸びた根本の黒い金髪に無精ひげと、見た目はだらしないのであるが、その実力は折り紙付きと言う難しい役柄を見事に演じている。
一方ちさとが配属されるのは”オフィス向日葵”といういかにもな名前の営業部署である。この営業部は業績が非常に良いらしく、初日からちさとは事務所での寿司パーティーなどの歓迎を受ける。
まひろは当初日野に全く信用されておらず、わざと試すような事をされるのだが、その実力を見た日野は少しづつまひろを信頼し始める。(日野の殺し方は観念した相手に毒を飲ませるという方法。清掃班が喜ぶ方法らしい)


しかし実は日野本人は過去に自分を裏切った後輩を殺しており、まひろには須佐野からその事実を調査し、証拠を見つけ次第日野を粛清する指示が出されていた。
そのためまひろは最初日野と距離を取ろうとするが、お互いのコミュニケーションが苦手等の共通点を理解するうちに相棒として打ち解けていくこととなる。(その仲の良さは、じゃれ合う姿を見てちさとが「まひろが普通に喋ってる」と驚くほど)
同じ頃ちさとは当初に受けた営業部の印象とは違う実態を知る事となる。
”ユニークな営業”の名のもとに行われる同僚からのパワハラは暴言と人格否定、挙句は銃を突き付けての恫喝まがいの指導など、見てる方の精神が参りそうになるくらい酷いものだった。


実際に営業の内容も”依頼主の社長の娘に暴行を加え地元ヤクザのせいにする”、”交通事故の遺族に無関係の中華屋の店主が犯人だと吹き込む”等依頼人にガセネタを吹き込んで罪の無い人々に濡れ衣を着せ追い込みで営業を取る悪行を繰り返していた。
なんと「2ベイビー」で殺し屋アルバイトの兄弟の仲介人に”正規のクルーを殺せば正社員になれる”と嘘を吹き込んだ張本人までいた。
妄想の中でちさとは相手を撃ち殺したり撲殺したりして耐えてはいたが、あのちさとが良く我慢したと褒めてあげたい。きっとまひろの事を思い出して耐えたんであろうことは想像がつくが。
ある時「2ベイビー」で受けたと思われる古傷の痛みとパワハラに耐えかねて仕事を早退したちさとがたまたま店先にうずくまっていた姿を見かねて雨宿りをさせてくれた中華店の店主がいた。(ちなみに森下能幸)


卵スープとチャーハンでちさとを元気づけてくれたその店主が営業部のガセネタのせいで殺されたことを知り、ちさとは一線を越える決意をする。
帰宅したちさとがまひろに話す場面は今作屈指の名場面。大きく見開いた目から涙が次々あふれ出すちさとと、そんなちさとを見て最初は狼狽するのだが、ちさとと一緒に仕返しをすることを即決するまひろの姿がこれまでに培ってきた二人の絆の強さをこれ以上ないくらいに物語っている。


まひろはこんな自分と一緒にいてくれるちさとを傷つけるものはどんな理由があっても許さないという覚悟を話す。この場面は本当に泣けた。
そしてそのあとのコインランドリーでの戦いを皮切りに、営業部に乗り込んで次々に殺して行く場面はこれまでのこちらの溜まりに溜まったストレスを晴らすかのように最高のカタルシスを見せてくれた。
”二人なら最強”—これまで何度となく見せてくれた圧倒的なコンビワークで次々と葬っていく。—ちさとを言葉で追い詰めた栗原も—優しい店主を罠にはめた三好も—


そしてそんな中、まひろに粛清されたはずの日野が突然現れる。
実はまひろが粛清と称して日野に飲ませたのは睡眠薬で、日野を逃がすために遠くに送っていたのだが、目を覚ました日野は二人の罪をかぶって逃がす事と、自分を殺そうとした協会に復讐をするためにやってきたのだった。滅茶苦茶恰好良すぎる!まひろと日野の間にも知らず知らずのうちに強い絆が生まれていたことに無条件で嬉しくなった。
その日野の気持ちを汲んでまひろを気絶させてちさとは脱出に成功する。
この場面から最終話は始まるのだが、日野の活躍する姿から始まって本当に嬉しかった。制作陣の思惑にまんまとハマっている気もするが、この際どうでもいい。


が、しかし最後は日野も粛清されてしまう。(粛清役は山口祥行!)”ドムドムバーガー”で自分に優しくしてくれた店員さんの事を最後に思い出すのがまた切ない・・・
目を覚ましたまひろにちさとは言う。日野さんは助からなかったかも知れないけど、まひろに救われたんだと思うと。そして自分も救われたと。そうちさとに言われることでまひろもまた救われる。
そのあとは第1話の”過小評価されている食べ物ランキング”の伏線(?)を回収して、コンビニに買い物に行くのだが、この場面の”大好きだよ”発言が何かと取り沙汰されるが、ここでは触れないでおこうと思う。
それよりも、未来の話をするのが苦手だというちさとのセリフを聞いて、シリーズを通してどこか達観しているっぽいちさとの佇まいの理由が初めて判った気がした。「10年後も一緒に死体を凍らせようね」と言うまひろの言葉に微妙な表情を浮かべてたのを思い出した。


その後二人は須佐野に対して”これからは本当に殺すべき相手か自分たちで見極めたい”と言う。
もちろん中華店の主人のようにガセネタで殺されるようなことが許せないという意思表示でもあると思う。事実二人は殺しのターゲットである絵に描いたようなパワハラ社長(ちなみに浜野謙太)の裏付けも自分たちで行って殺している。


だがしかし、二人のこの選択には組織との対立を生んでしまう危険を孕んでいる。
組織の命令を拒否し、粛清される可能性をも示唆している気がしてならない。
”自由と死は隣り合わせ”—果たしてその時に二人には生き延びる道が残されているのだろうか?
山口祥行演じる常岡は入鹿みなみにこう言っている「あの子たちとはいつかやり合うことになるかも」と。
そんな日は来ないで欲しいと願うし、見たくない。
家で家事をしながらちさとは”ナイスデイズ”でかえでが最後に言った言葉をほぼそのまま口にする。
それを聞いたまひろは”誰かが言ってたな”と返す。
まひろは”ずるくても、それでも生きててよかった”とも言っていた。
どうか無様であっても生きる選択をしてほしいと心から願う。
そして届いたクリスマスツリーを前に二人が揃って食べるのはやっぱり”イチゴのショートケーキ”である。
「今日、11月30日は”クリスマス気分記念日”です!」

| 原作 | 阪元裕吾 |
|---|---|
| 脚本 | 阪元裕吾 |
| 監督 | 阪元裕吾 平波亘 工藤渉 園村健介(アクション) |
| 出演者 | 髙石あかり 伊澤彩織 飛永翼(ラバーガール) 水石亜飛夢 中井友望 草川拓弥 本田博太郎 柄本時生 |
さて、長くなりましたが「ベイビーわるきゅーれ」はこれでひとまず終了でございます。
本当に楽しませてもらいましたし、何なら今でも繰り返し見てしまいます。
彼女たちの未来がどうなるのか気になって仕方がありません。
最後に、このドラマのエンディングで流れる「包帯」という曲がすごく好きです。
彼女たちの世界観をまるで本当に包帯で包んでしまうかのような優しい曲です。






コメントを残す