
「コイツら全員、めんどくせえ」というキャッチコピーが付いた今回の国岡のミッションは殺し屋志望の女子たちの合宿の教官。
個性の強い彼女たちを指導するだけのミッションのはずが、事態はどんどん最悪の方向へと転がり始めることに!
集団行動が苦手な自分は林間学校等の行事が苦痛でしょうがなかった記憶しかない。とは言え参加すればしたでそれなりには楽しんでいた気もするのだが、結局どこか他人事のような目で遠くからみんなが楽しんでいるのを眺めていたような記憶がある。
それ故自分はどことなく国岡が持っている虚無感や社会に対して感じる疎外感のようなものが理解できる気がしている。
そんな国岡の日常を描いた前作を観た続きでほぼ義務感のような感じで本作を視聴したのだが、結果想像以上に面白かった。
むしろこちらの方が好きな気がする。
様々な理由で殺し屋の仕事を選んだ女子たちが集まってくる。個性的でないわけがない。そんな彼女たちを教育するために白羽の矢が立ったのは国岡。
どうして国岡なんだろうと考えてみたら、国岡は協会から依頼を委託されるいわゆる”フリー”だからという結論が出た。
そう言えば今回の仕事を依頼した市瀬は国岡と真中をスカウトしようしていた。


今回もフェイクドキュメンタリー、いわゆる”モキュメンタリー”形式を踏襲しているのだが、冒頭の女子たちの面接場面はいきなり普通の撮影で始まる。
国岡が登場してから初めて取材のカメラが入り、前作の世界観の続きだという事が分かるようになっている。最初の見張りを殺すために坂元監督が手を貸しているのがすでに感覚が麻痺しているようで可笑しい。
もはやドキュメンタリー形式にこだわる必要はないんじゃないかとも思うのだが、カメラマン役の大阪健太を出すために必要だったようだ。
ちなみに大阪健太は前作にもホワイトベアーと絡む役で出演している。(出て来て数分で地雷で爆散するのだが)また同じ坂元監督の作品にもほぼ常連で出演している。
国岡が登場時にこなすミッションはなぜか真中の救出である。どこからのどういった依頼なのかは説明はないのだが、真中のポンコツぶりと国岡の腕前を初めて視聴する人に理解してもらうためのシチュエーションかと理解している。
とは言いながら、今回のメインキャストは6人の女子たちである。面接の場面では彼女たちのキャラと背景がそれぞれ丁寧に描かれている。


彼女たちは”ミスマガジン”の2021年度受賞者らしく、正直演技は・・・という感じで最初は不安しかなかったのだが、後半はこちらの心を動かす演技を見せてくれる。しかし「ベイビーわるきゅーれ」の二人と言い、殺し屋は美少女が多い世界らしい。
その中でもひときわ異質なキャラが沖田響である。
彼女はこの中で唯一人を殺した経験を持つ。(しかも中学生の時に)暴力的なサイコパス気質がどこかで見たことがあるような気がすると思ったが、よく考えてみたら杉本ちさとに似ている事に気付いた。
その沖田と最初に仲良くなるのが山田ふみか。今まで何をしても長続きした試しのない子が今度は殺し屋を目指すという設定。血を見るのが苦手らしい。
あと前作のヒットガール牧田の友人であるという神里はるかがいる。彼女は前作を見て国岡のファンになったらしい。ちなみにこの世界では前作はダークウェブで見られるとの事。悪気はないのだが空気を読めない発言を度々する。
あと神里は国岡が真中を救出する現場にいるのだが、何をしていたのかが気になる。”定時なんで失礼します”と言って去って行くのだがバイトでもしていたのだろうか?この場面の設定は謎だらけである。
そんな神里の友人で一緒に殺し屋を目指すのが今井美香。バイト感覚かよと思ったが、実は一番戦闘力があったりして面白い。
東雲唯はありがちな芸能事務所の詐欺に引っかかっていることに気付かずに、法外な請求金額を支払うために実入りの良いであろう殺し屋の仕事を目指している。万が一有名にでもなったら暴露されてスキャンダルになるリスクは考えてないらしい。この先変な宗教にハマらないことを願うだけである。
また殺し屋協会江東区代表の父親を持つ鹿目梨紗はポンコツでさえなければ父親のコネで間違いなく上に行けるはずである。ちなみに協会代表って何をするんだろうか?ハンドガンは苦手のようだがマシンガンなら命中させられるという都合の良い特技を持つ。
そんな彼女たちに市瀬が語る金持ちのイメージは”ウーバーイーツ”、”U-NEXT”、”シャトーブリアン”、”ジャガー”である。何とも薄い成金主義である。ちなみに神里はジャガーを動物と取り違えている。ジャガーに跨る姿を想像するとシュールではある。
そんな薄い市瀬の依頼で国岡と真中はインストラクターの仕事を引き受けることになる。訓練場は山の中にあり、土地の持ち主は板尾創路演じる浜辺という謎の人物。そう簡単には手に入らない銃器類を取り揃えているらしい。


そんな感じで始まる合宿が順調に進むはずもなく、説明中にいきなり発砲する沖田を始め、やる気があるのかないのか分からない彼女たちに国岡たちはペースを乱されながら進んで行く。
途中で心が折れた鹿目が休憩を取る場面では、彼女の様子を見に来た東雲と一瞬打ち解けかけてタメ口になりかけるのだが、東雲がマルチまがいの商法に騙されていると知った途端”ヤベッ”というような顔になり、また敬語に戻る場面が面白い。
また鹿目は明らかに自分勝手な沖田の事が嫌いなようで、自分から”殴ってください”と言った癖に唯一殴打してきた沖田に即時にやり返す。”専守防衛”はそういう意味ではない気がする。
あと今回は真中が出世を果たして大活躍(?)をする。彼女たちにパワハラまがいの説教をして、挙句には”格闘術が大事”と力説する。(おまいうである)射撃訓練ではティモシーばりに華麗に弾をかわす動きまで見せる。
その訓練でも成果を出せない鹿目に対して国岡は”続けていればいつか点と点が繋がって、それが分かる日が来る”と語るのだが、その前に死んでしまうのではないのだろうか?そんなに悠長で甘い仕事でもないように思うのだが・・・
しかし今回一番面倒臭いキャラは何と言ってもカメラマンの大阪である。毎日訓練後に的外れで上から目線な批評をしてくれる。殺し屋に憧れているのか毎朝自主トレしてはいるのだが、肝心な場面では何の役にも立たなかったりする。そして到底表には出せないであろうこのドキュメントをメジャーにしようとする。誰がこんなのを雇ったのか知りたいものである。
2日目に浜辺の娘である姫奈(沢口愛華。ミスマガジン繋がりのよう)が実際に人を殺す訓練のための練習台を連れてくるのだが、一体どんな人生を歩めばこんな運命になるのだろうか?粛清の対象かなとも思う。本作は謎の設定が多い。


そして沖田以外は無事(?)に初の殺しを経験するのだが、今回は土を掘って埋めるらしい。死体処理にも色々なパターンがあるようだ。”殺し一瞬、後処理一生”ーマイホームヒーローの佐々木蔵之介に誰か言ってあげて欲しかったと思う。殺しの後は寿司らしい。
最終日の実地試験は市瀬が殺しの依頼を請けたと思われるターゲットを実際に殺しに行くのだが案の定グダグダになる。


山田、神里、東雲チームは相手の人数が多い気がする。普通に無理な案件のように思うのだが、真中が最初からフォローのために控えていたのだろうか?
あまりに緊張感のない彼女たちは捕まって当然である。
一方の沖田、今井、鹿目チームの相手は夫婦二人だけである。普通に急襲しても良さそうだがなぜか沖田は手榴弾を選択する。殺す方法は問わずなんだろうか?
結果こちらも失敗するのだが、二人の事を身を挺して手榴弾から庇う鹿目に対して初めて沖田が信頼したであろう場面が無理なく描かれている。
結果今回の試験は全員不合格となるのだが、最終日に参加した市瀬は敗者復活のチャンスを与えようとする。6人での殺し合いの結果最後に生き残った者一人だけを採用とするデスマッチである。
国岡もどうなるのか分からず見守るのだが、一人先に銃を手にした山田は迷わずに市瀬を撃ってしまう。その後続けて沖田が止めを刺す。
呆気にとられる国岡をよそに彼女たちは市瀬の傲慢さと狡猾さが許せないと話す。そしてここから物語は急展開を見せる。
市瀬は実は”フォックスハンター”と言う野良の中でも相当ヤバいグループに属していた。フォックスハンターは快楽のために一般人を攫い、山に放って人間狩りを楽しむとんでもない極悪な行為を行っており、その内容をダークウェブで配信していた。(殺しのターゲットを対象にすればいいのに・・・)


市瀬はどうやら女子たちの殺し合いも配信しようとしていたようだが、結果的に自分の殺される様を配信してしまったようだ。自業自得である。
すぐにフォックスハンターのメンバーかららしき電話がかかってくるが、罪の意識の全くない沖田は逆に相手を煽ってしまう。意外と正義感が強いようだ。
そして国岡に対しても悪びれずに言う「やり合うしかないでしょう?根絶やしにしてやろうよこんな奴ら」と。なかなかの男前だ。
その後どんどんとやってくるフォックスハンターのメンバー(相当な人数である。急に集合をかけてこれだけの数が集まるとは余程の暇人の集まりなのか?)を相手に一人だけ戦う気のない国岡以外のメンバーで立ち向かうことになる。
国岡が書いた勝率アップのメモを頼りにしたとしても銃器類で武装した相手にナイフで立ち向かうのは無理があるだろうと思ったが、沖田と山田コンビは第一陣を殲滅してしまう。ちなみにこの時の二人の芝居はなかなか上達していて感心した。そういえば沖田の使う斧と同じ形のものを”ナイスデイズ”の拷問シーンでちさとが持っていた。やっぱりキャラ被りのようだ。
フォックスメンバーの中には東雲の所属事務所の社長もいたのだが、騙されていることに気付いた東雲によって撃ち殺されてしまう。その後全弾撃ち尽くした東雲は他のフォックスメンバーから銃を奪い殲滅するのだが、人を撃つことに拒否反応を見せていた彼女がそんな技術をいつの間にレクチャーされたのか謎である。
今井に関しては完全素手で、止めを神里に任せるというコンビワークを見せるが”いや、それはちょっと・・・”と思わざるを得なかった。


けれどもやっぱり多勢に無勢なのは当たり前で、彼女たちは追い詰められてしまうのだが、彼女たちの危機を救うのはなんとポンコツの鹿目である。(追い詰められた時に誰かが鹿目の不在に気づくが、沖田は”あいつは死なねぇ”と答える手榴弾からの流れが痺れる。打って出る前の”楽しい林間学校だったな”が泣けた)
しかしいくらマシンガンを持っているとしても大人数に真正面から向かって良く被弾しないものである。前田慶次ばりに天に愛されているのだろうか?そしてマシンガンの真中はともかく浜辺のガトリングガンとグレネードランチャーはやりすぎな気がする。ガトリングガンとか日本に存在しているのだろうか?
基本はコメディでご都合主義とは言え、例えちさととまひろであっても無事で済むのかさえ分からないと思う人数相手に誰一人死なずに生き残るのはいくら何でも無理がある気がするのだが、楽しく観るならそれは言わないお約束と思うことにした。
雑魚(彼女たちも相当雑魚な気もするが)を全滅させた後、ボスキャラの双葉(中村竜介。”黄龍の村”でも相当に強いキャラを演じている)が立ちはだかるのだが、たった一人に彼女たちは瀕死にされてしまう。雑魚キャラたちの立場がなくて可哀そうだ。
彼女たちを助けに来た真中も案の定バチボコに双葉にやられてしまい、ナイフを振りかざした双葉の前に絶体絶命!の瞬間国岡が助けに入る。
なんだかんだ最後は国岡が出るんだと思いつつもその瞬間に出るいつものタイトルバックに痺れてしまう。そして国岡が現れた時には彼女たちは安心したような表情を見せる。なんだかんだと信頼されていて良かったと思う。


やっぱり伊能と中村のアクションはピカイチで、フィクションの域をはみ出している。銃を取ろうとした国岡が無理と判断するや相手にも取られないように遠くに蹴り飛ばすところとか”プロ”と言う感じがよく出ている。素晴らしい演出である。
そんな国岡も段々と劣勢になって行き、締め落とされそうになる瞬間に鹿目が銃を手に取るのだが、おい大丈夫かよと思った瞬間沖田がそっと手を添える。かなり泣かせにくる演出である。
まあ沖田が撃つのなら大丈夫だろうと安心した矢先に双葉の眉間に銃弾が当たるのだが、なんと6人で撃つという凄いことになっていた。
それは逆に当たらないんじゃないかとも思ったが、この映画にはそれ以前に突っ込みどころが多いので今更な感じだと思うことにした。
ところで今回の死体処理は誰が料金を支払うのだろうか?やっぱり一番持ってそうな浜辺だろうか?だとするとただ単に場所の提供をしただけなのに気の毒である。
国岡と言うキャラクターはどうやら関わった相手は放っておけない性分らしく、当初は逃げ出すようなことを言っていたが、実は最初から手助けをする気だったことは想像がつく。


しかし”たった3日のレクチャーで彼女たちはこんなに強くなるんだ”とか”現実離れしている”とか、そんなことを気にする人はこの作品を観ないことをお勧めする。
最初は統率の取れていなかった彼女たちが実践を通じて絆を手に入れる物語と思えばいい。見せ場は国岡が持って行くがやはりこの作品の主役は彼女たちだと思う。
実際彼女たち6人が楽しくこの作品に出演しているであろう空気が伝わってくるし、そんな彼女たちだからこの不思議な作品が成立しているのも確か。
最後に火を囲んでみんなでご飯を食べる様子は念願の林間学校に来れた嬉しさに満ちている。
フォックスハンター壊滅と言う土産と国岡の口添えがあれば間違いなく彼女たちは協会に入れるだろうし、入ってしまえば殺し屋ではないポジションの仕事もあるはずである。
今後の作品に彼女たちが出てくる可能性は限りなく低いだろうが、是非成長した彼女たちの姿を見たいものである。

| 監督 | 阪元裕吾 |
|---|---|
| 脚本 | 阪元裕吾 |
| 出演者 | 和泉芳怜 山岡雅弥 天野きき 辻優衣 大島璃乃 内藤花恋 伊能昌幸 板尾創路 |
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今回も最後までお付き合いいただき有難うございました。
余談ですがWOWOWの”ああラブホテル”と言う1話完結の連続ドラマがあるのですが、その1編に伊能昌幸が主演するエピソードがあります。限りなく国岡に近いキャラクターです。なんてったって殺し屋の役です。
偶然見つけたときは非常にラッキーな気がしました。






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